【4】やりたいと思ったことを貫け

Plan・Do・See(PDS) 現在、横浜校は開校して2年半が過ぎ、今年4月には渋谷に東京校もオープンされましたね。

竹内 はい。渋谷のほうは、ホームスクーラーや不登校の子が親子で訪れる「居場所」という感じです。カリキュラムを受ける学校というと、不登校の子はいやがりますからね。子どもたちは10人くらいですが、プロジェクトに賛同してくれている寄付会員の方も参加しています。ただ実施しているのはプロジェクト型というか、やはり探究型の授業に近いんですよ。

PDS そうそうたるメンバーが講師をされていますよね。大学院で教えているようなプロフェッショナルな方々が。

竹内 そうですね。茂木健一郎がワークショップをしたり、宇宙飛行士の山崎直子さんに「宇宙飛行士のなり方」をお願いしたり。あるいは世界的なマリンバ奏者の三村奈々恵さんにきてもらって、音楽体験をしたり。「本物にふれた体験」って子どもの未来に大きな影響を及ぼしますよね。

東京校の様子。脳科学者、音楽家、物理学者……。とがったプロフェッショナルが訪れる“居場所”
東京校の様子。脳科学者、音楽家、物理学者……。とがったプロフェッショナルが訪れる“居場所”

PDS 私もサッカーをずっとやっていたのですが、小学生の頃、セルジオ越後さんが来てくれて一緒にボールを蹴ったことがあるんです。もう足技がすごくて、目線が格段にあがったことを覚えています。

竹内 ありますよね。また僕らの場合は、さらにこうしたプロの方々のカリキュラムを、英語やプログラミングと融合させて進めていきたい。東京交響楽団の指揮者の飯森範親さんという方がいるのですが、うちにいる物理学者の田森佳秀先生と天才同士で意気投合して、「大人には聞こえない演奏会をやろう」と企んでいます。作曲した音楽をプログラミングで子どもにしか聞こえないモスキート音という高周波に変換してやっちゃおうという。

PDS それ聴いてみたいですね! 大人だから、聴こえないんだけど(笑)。

探究型の授業をネットで全国に

PDS 竹内さんは校長であると同時に、経営者でもあるわけですよね。

竹内 そうですね。でも経営者としては、本当に未熟で、経営者の友人からは「君のやっていることはおままごとだ」と言われ続けてきました。しかし、ようやく来年の後半くらいには黒字化が見えてきたかなという感じです。

PDS おおっ!

竹内 生徒数を増やすのは簡単ですが、少人数が前提で、またトライリンガルなうえに高度な探究型授業をできる先生は限られます。そう考えると簡単には授業は増やせない。そこで、授業のインターネット配信を計画しています。これを全国のホームスクーラーの方たちに広げていきたいと考えています。

実際にプログラミングなどを教えながら実感するのは「スキルを持ったプロフェッショナル人材ではないと先生役は難しいこと」だという
実際にプログラミングなどを教えながら実感するのは「スキルを持ったプロフェッショナル人材ではないと先生役は難しいこと」だという

PDS なるほど。ネット配信で質を下げないまま、パイを広げていくわけですね。そうしたら探究型の授業を日本中どこでも受けてもらえると。

竹内 まだまだ過渡期だとは思います。しかし、僕は探究型、プロジェクト型の授業に舵をきって伝えていきたい。先ほどもいいましたが、第四次産業革命がおき、不確定な要素が増える未来に生きる武器になる。たとえば自分の娘にはそれを身につけて欲しいんですよ。僕はいま58歳ですが、娘が自立する前に死ぬ可能性もある。その前に将来生きていくための武器は身につけて欲しい。それを他の子どもたちにもみんな身につけて欲しい。

PDS 自分で自分の人生を切り開く力ですね。

竹内 そうです。そしてできれば、自分が一番“とがれる”ことで生きていけるのが、最も幸せだと思うんですね。その環境をつくり、導いてやることが僕らの学校の役割だと思っています。

PDS 人生の後輩たちに“働くこと”についてアドバイスをお願いします。

竹内 ひとつのワードでまとめるのは難しいな……。ただ「自分がやりたいと思ったことを貫け」ということですかね。

PDS ホームページにも「好きから始まる学び方」という言葉が出てきますね。

竹内 やはり自分でおもしろい人生を発見するのが一番楽しいんですよ。自分で選んで失敗するなら本望だし、たくさん失敗しながら、力強く生きていって欲しい。それが、若い人たちにも子どもたちにも、もちろん私の娘にも、かけたい言葉です。